蹴りたい背中

最近忙しさを理由に、本を読まないでいたのですが、文芸春秋が売っていたので、綿矢りささんの『蹴りたい背中』を読みました。小説の内容は、芥川賞をとったくらいなのですから、当然すばらしいし、評価は人によってちがうと思うので書きませんが、いくつか驚いたところがありました。
いちばん最初の理科実験室のシーンなのですが、なんと文中に、(苦笑)というのが入っていました。
三島由紀夫が割腹自決をしたのが1970年。それから34年で、芥川賞をとる小説家が、小説の中に(笑)を使い出しましたよ。ねえ、三島さん。
ましゅまろちゃんはいつも思っています。もし三島由紀夫が生きていたら、現代の、ネット関連とかストーカーみたいな病的な犯罪をどう描くのか。
三島由紀夫の『午後の曳航』という小説があります。頭の良い子供が、船乗りの男を「死刑」にする話しです。舞台は横浜です。大阪に対して神戸。東京に対して横浜。子供たちが男を連れ出した場所は、小高い丘で、そこには水道タンクがあります。
どう思いますか?この舞台設定は、たまたま小さな山みたいな丘にはタンクがあるのが普通なのかもしれませんが、酒鬼薔薇聖人の事件と異常に似通っています。『午後の曳航』が発表されたのは昭和38年9月です。この、なぜか意味がわからない「一致」が三島由紀夫のすごいところです。ましゅまろちゃんは、三島由紀夫川端康成が日本最高の小説家だと思っていますが、三島由紀夫は生きていたら、きっと村上龍みたいにはならなかったんじゃないかと思います。でもまあ、こんなに進行してしまった時代まで、生きているとも思えませんが(笑)