勝負は時の運ですから

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20040322ic21.htm

105連敗中の競走馬ハルウララが、武豊騎手を乗せて駆けた。
22日の高知競馬(高知市)第10レースで実現した地方の未勝利馬と中央のトップ騎手のコンビ。スタンドを埋めた1万3000人と全国のファンが熱い視線を注いだが、11頭立ての10着に終わった。泥んこ馬場での106敗目。それでもファンたちは「必死で走ってましたね」「これでよかった」と満足そうだった。
424キロと小柄の8歳牝馬(ひんば)。パドックでやや興奮した様子を見せたが、馬場で落ち着きが戻った。単勝1番人気。午後4時40分、ゲートが開いた。
調教師の宗石大さん(53)は、愛馬の首をそっとなでて送り出し、ゲート近くで見守った。
1998年秋のデビュー戦は最下位。以来負け続けだが、妙に愛着があって、手放さなかった。「処分」を打診されたのは昨年夏。関係者を回り、説き伏せた。「餌代くらいは自分で稼いでくる馬だ」
武騎手に望みを託し、調整に力を注いだ。「初勝利も夢じゃない。なんとかなるかもしれない」
第1コーナー。中段につけた。初の入場制限が取られたスタンドがわく。
アナウンサーの橋口浩二さん(37)は場内で実況放送を始めて10年。連敗が60を数えたころ、「すごい」と思ったという。不振の高知競馬を盛り立てたくて地元紙記者にその「すごさ」を話した。ブームの始まりだった。
「気持ちに脚がついていってない」。放送しながらそう感じた。
抜かれた。向こう正面を懸命に追走する。
仲間4人で来た高松市の高木巖さん(80)は「ようついてるけど、やっぱり勝てんか」と祈るような表情。「あきらめないで」と手を合わせる人も。
先頭から10馬身以上離されて第4コーナーを回った。むちがしなる。全力で駆ける。
武騎手は高知競馬の求めで騎乗した。「異常な騒がれ方。GIレースを勝った馬よりも注目を集めるのは理解しがたい」。自らのホームページでそんな戸惑いもつづったが、「ひそかにいい結果を狙ってた」。
ゴール。見せ場をつくれず、10着。しかし、場内を包んだため息は、すぐに大きな拍手に変わった。
「1着……」。橋口さんはそうアナウンスして絶句した。宗石さんはうっすらと涙を浮かべ、「勝負は時の運ですから」。
会見した武騎手は「声援に応えたかったが、どうすることも出来なかった」と悔しさをにじませた。

106回負けたって、勝負は時の運なんですよ。ハルウララが勝てなくたって走らせておけば日本中の注目を浴びることができるかもしれないって、感じていたからこそ走らせ続けたハルウララの関係者は、じゅうぶん勝負に勝っていますしね。