泣き屋さん

中国では葬式などのときに「泣き屋さん」という女性を雇って、泣いてもらう慣習があります。故人がいかにすばらしい人物であって、亡くなったことがいかに惜しいことかを「泣く」ことであらわすために、参列者が泣きやすくなるように、「泣ききっかけ」になるように、泣くプロに泣いてもらうのです。
どんなに泣きたくても、参列者が誰一人として泣いていないで、真顔でいたら、なかなか人前で泣き出すことはできないこともあります。だから、泣き屋さんは中国の葬式ではとても重要な役割を果たしているんじゃないかと思います。日本では、こういった葬式などのときには、できる限り感情は表に出さず、特にいちばん悲しいはずの家族などは気丈に振舞うことが良いというならわしになっています。だから泣き屋さんはいません。
葬式のようにたくさんの人間が集まった場合、この泣き屋さんの効果は絶大なんじゃなかと思います。中国の人は泣き屋さんに慣れているからそれほどではないのかもしれませんが、日本人が中国の葬式に参列して、しかも泣き屋さんの慣習を知らなかった場合、「引いてしまう」ことがない限り、必ずつられ泣きすると思います。「引く」というのは、泣き屋さんの泣き方が大げさすぎて、感情が冷めてしまうことです。映画やドラマで、どんなに泣かせるシーンであっても、あまりにも過剰な演出、音楽や出演者の演技が過大すぎれば、やっぱり冷めてしまいます。しかし、それは余程のことであって、たいていは、過剰な演出くらいでちょうど良いというか、過剰な演出を作ることは難しいと思います。そういう理由から、「引く」ことは滅多にないんじゃないかと思います。
世の中には色んな風習があるものですね。