八王子駅

八王子駅で乗換えをしたときに、駅員が究極のアナウンスをしました。
JRの八王子駅は現在トイレの改修工事中で、女性用トイレは改札とかがある、今までと同じところにあるのですが、男性用トイレはホームの端に、簡易トイレみたいな感じで移動されているんです。
ぼくが乗り換えをしたのは深夜でした。
八王子市は盆地になっていて、夏は暑く冬は寒い。京都と同じで、盆地の寒さというのは底冷えなんです。芯まで冷えてしまうんです。当然、ホームの端っこに、隙間だらけでとりあえず作られた仮設トイレの便座は、人間の心臓を麻痺させ、死に至らしめるに充分な冷気を持っているはずです。はず、というのは、正直どう考えたって氷でできたような便座に座るお人よしはいないからです。
その仮設トイレの横で電車を待っていると、駅員がマイクに向かって、駅全体に語りかけだしました。
「本日も八王子駅をご利用いただきありがとうございます。現在、八王子駅ではトイレの改修工事をしております。お客様には大変、ご不便をおかけいたします」
そりゃあかけるさ、不便を。駅を利用する人の中には下痢の人だっていますよ。でも絶対かかってる、不便が。寒すぎてね、雪じゃなくて小さい氷が降ってるんですよ。どんなにお腹をこわしていようが、完全にかかっています。不便が。