みなさんは電車に乗っている時は何をしていますか?だいたい本を読んだり眠ったりしている人が多いんですが、ぼくはだいたい電車に乗っている時は妄想を膨らませています。これは別にチカンしようとかそういうのではなくて、とにかくまあ、ぼくの頭の中でしか繰り広げられないような物語を展開させているわけです。だから、ぼくは電車の中で目撃されるといつもにやにやしていると言われます。これはある意味チカンよりもたちが悪そうなんですが、この時間がぼくにとってはお笑いの中で結構重要になっています。この妄想からネタが生まれてくるわけです。
しかし、ものすごいとんでもない妄想が生まれてもぼくらのような無名の芸人は舞台装置にほとんどお金はかけられないので、妄想をそのままお客さんの目の前に出現させるのは不可能です。例えば、毛の生えた鯖がいけすにいっぱいつまった「皿」という漢字の中で松浦亜弥の「♪セクシーなのキュートなのどっちがすきなの〜」という歌を歌いながら巨大化していく、という妄想があったとして、こんなものはスピルバーグ監督ぐらいしか映像化できませんよね。じゃあどうすればいいのかというと結局、言葉を増やすしかないんです。ボキャブラリーを増やせばお客さんの頭の中と自分の頭の中が接近してくるはずだと思います。微妙なニュアンスをよりはっきりと伝えることができるようになりますからね。
だから本を読まなければいけないなと思っています。小説家とかは言葉のプロですから、勉強できる点が無数にあるからです。本を読むとなると最適なのはやっぱり電車の中です。となると必然的に妄想の時間が削られます。ぼくはもうこのループから抜け出せず、どうすればよいかということを今日は電車の中で考えようと思いながら駅を寝過ごしそうになりました。