競馬のステッキ

ぼくは競馬が好きなんですが、競馬を知らない人から見ると競馬って変な世界に見えるかもしれません。これはまさに競馬を知らない人の判断が正しくて、明らかに変な世界です。
競馬の騎手はレースの時にステッキというムチを持って、それで馬を叩いて気合を入れさせたり左右に方向転換したりするんですが、このステッキも実はただの道具ではなく、武器でもあるんです。
騎手はレース中に自分の馬ではなくて敵の馬の顔とかをステッキで叩く時もあるんです。時速70キロの動物に乗りながらやるんだからちょっといかれているともいえますよね。もちろんこれはラフプレーで、できるだけ人に見えないように、たまたま当たってしまったようにやるんですが、競馬場には何万人のお客さんが来るわけだしテレビ中継もしているんだからたまには見つかるんです。最近では去年の新潟競馬場で1着になったカゼニフカレテに乗っていた吉田豊騎手が隣で競り合っていたシャイニンググラスの顔面を明らかにステッキで叩いていました。しかし、シャイニンググラスを管理している調教師は「うちの馬にムチが当たっとるやないか!」とひとしきり怒った後「まあ、わしも若いころようやったからな」と納得していました。こっちは金を賭けてんだぞ。納得してどうすんだよって感じです。
またさらにすごいのは、もう20年前、岡部幸雄騎手はレース中危ない乗り方をした後輩騎手の足や体を5回ほどムチでぶったたいたことがあります。馬に乗りながらですよ。これは教育としての愛のムチなんでしょうが、スポーツ新聞にでかでかと取り上げられ、岡部騎手は丸坊主にしました。
まったくもってすごい世界です。