舞い降りた天使

ぼくが中学生のころは、男の子はみんな放課後にゲーセンに行ったんです。すごく部活や勉強が忙しいやつ以外はたいてい毎日同じゲーセンに行くと顔を合わせることになります。今でこそプリクラだけのゲーセンは男性立ち入り禁止というのもありますが、そのころはゲーセンには女の子はひとりもいませんでした。100円のコーラやファンタを買って、缶のプルタブは外れるやつだったのでそれを灰皿に捨てて、脱衣マージャンを始めるわけです。自分がマージャンで勝てばゲームの中の対戦相手の女の子が服を脱ぐんですが、この敵がなんと宮沢りえ西田ひかる森高千里なんです。もちろんアニメなんですが、どうみてもその3人にそっくりなんです。ちなみに司会者はうっちゃんなんちゃんです。完全に肖像権無視です。でもこのゲームはなんか演出が地味であまり人気はありませんでした。
ところがそんな暗〜い中学生男子のたむろ場にひとりの天使が舞い降りたのです。チャイナドレス格闘家婦人警官チュンリーです。チュンリーは「スト2」という対戦ゲームのキャラクターなのですが、チュンリーが天使であった理由はただひとつ、美人なのに負けると目の上にたんこぶを作って打ちひしがれるところにあります。特にぼくらが「マサ斉藤」と呼んでいたザンギエフに負けたときなどは、打ちひしがれているチュンリーザンギエフは「ロシアの大地をお前の血で真っ赤にそめてやろうか?ペレストロイカー!!」と共産主義なのか改革派なのかわからない決め台詞まで浴びせかけます。これに日本の未来を背負って立つ童貞たちが興味を示さないはずがありません。ところがぼこぼこにされ続けるチュンリーに救いの手を差し伸べる色男も現れます。彼らはチュンリーを使って出せるわけがないはずだった強百烈キックを出し、勝てるはずがなかったベガを倒しました。愛する女のためにあそこまで一途になれるなんて素敵じゃないですか!!
それが今日本を背負って立とうとしているわれわれの世代です。完全にあかんな。