第二次政治家ブーム

「第二次政治家ブーム」は中学生の時にやってきました。「第一次」ではひとりでテンションが上がっていただけだったのですが、この時初めて「政治家ブーム」は他人を巻き込みました。きっかけは友だちのひとりが選挙のポスターを見て大笑いしながら「やっぱ、選挙は顔だ」と発言したことでした。「やっぱりお前もそう思うか?」ぼくは高揚する気持ちを押さえて尋ねました。「ああ。そう思うさ」それからぼくらは通学路に貼られた選挙のポスターを見てはふたりで道路に倒れこんで爆笑しまくりの毎日を過ごしました。「第一次ブーム」と違い、市会議員が対象だった「第二次ブーム」の魅力はなんといっても「駅前で演説することがある」という点につきます。当時、ぼくたちの中学校のある市には十数人の議員がいたと思うのですが、その中でも「キャラクター的」に群を抜いていたのが、自民党の川鍋実議員と共産党の三井とおる議員でした。川鍋議員は茶色っぽいスーツを着た典型的な「おじさん風」議員で、三井議員は紺スーツに眼鏡の典型的な「インテリ風」議員でした。毎日見るポスターが「フリ」となり、駅前で実物を見るという「オチ」に、ぼくたちは本当に呼吸困難になりそうなくらい笑いころげました。
そんなある日、ぼくたちが政治家を見ては爆笑しているのを不思議そうに眺めていた同級生の女の子ふたりがぼくのもとにやって来て「サインをもらってきた」と言って1枚のルーズリーフの紙をくれました。ぼくは最初サインって何のことかわからなかったのですが、その紙には「平和と民主主義を守る、三井とおる」と書かれていました。おそらく三井議員は相当驚いたと思います。駅前で演説している市会議員にサインをもらう女子中学生なんて普通いません。
当然その後ぼくたちは、その紙1枚で半年くらい笑い続けました。