政治家魂

ぼくは昔から政治家が好きでたまらないのですが、古今東西の数えきれない政治家から、たったひとりだけ「こいつがすごい」という政治家を挙げろと言われれば、なかなか難しいのですが、多分中国の「周恩来」だと思います。周恩来総理は日本の田中角栄首相と日中国交正常化を果たした政治家です。1972年当時はまだ共産党の国である中国と資本主義国家である日本は正式な国交がありませんでした。その国交を毛沢東主席と田中首相の間に取り交わせたのが周恩来総理です。
当時、明らかに経済的に有利である日本の田中首相は日本有利の条件を持って中国へ乗り込みました。ところが中国の提示した条件は予想外に中国有利なものでした。田中首相は悩んだ結果「中国有利では日本の国民の世論が黙ってはいない。日本の世論は経済的に無視できないのだから、近いうちにこんなものはすぐ改定できるだろう」と考え、最初に持っていった条件よりかなり中国有利な条件で調印しました。田中首相の思惑通り日本の世論は「中国なめんな」となるはずでした。
ところが周恩来総理はすぐさま「日中国交正常化記念」として、日本の上野動物園にカンカンとランランという2頭のパンダを贈りつけました。これが周恩来のすごいところです。日本中がパンダを一目見るや夢中になってしまいました。パンダは誰が見てもかわいいに決まっています。ツートンカラーにのんびりとした動き。そしてなにより肉を食わないところがポイントです。日本中はパンダブームになり中国はいいという雰囲気になってしまいました。田中首相は怒りを抑えるために官邸でウイスキーを割らずにがぶ飲みしたといわれています。
政治的な武器というのは様々あると思うのですが、パンダを使った周恩来はかなりすごいと思います。