叶知識・その1

世の中には知っていて損なことというのは何ひとつないと思います。知識は多いに越したことはないです。たしかに世の中にはあまり見たり聞いたりしたくないようなこともあります。それは自分への悪口とか、悲惨で残酷なこととかです。しかしそれだって知ることによってより良く改善できるもので、やはり何だって知っていた方がいいと思います。なのでぼくは自分の興味のないことでもできる限り憶えようと思っています。しかし、そうは言っても、そうやって頑張って色々憶えてもはっきり言って何の役にも立たない知識というのは極わずかですが、あるにはあるんです。
赤瀬川原平という人は路上を散歩しながら、意味のない物の写真を撮るというアートを発明しました。それは例えば、階段があってそれを登っていっても扉がなくてただの壁の写真とか、ゴミ捨て場の「燃えないゴミは(金)だけです」という張り紙の写真とかです。(金)は当然曜日のことなのですが、台所の生ゴミ袋に大量に金が積み上げられ、それを毎週トラックが回収して東京湾に埋め立てている光景が赤瀬川さんの頭の中で浮かんだらしいです。そういった意味のない物を赤瀬川さんは「トマソン物件」と名付けました。トマソンというのは昔、巨人にいた選手で、4番バッターなのに三振ばかりでボールがバットにまったく当たらない、つまり「意味がないけどいる(ある)」象徴として名付けたらしいです。
そこでぼくも、知っていても意味のない知識を「男の乳首知識」と名付けようと思ったんですが、これは崇高なるアートのジャンルとしては品がないので「キャラメルコーンの豆知識」と名付けようとも思ったのですが、それでは長すぎるので、「芸能界での存在意義が不明」ということから「叶姉妹知識」略して「叶知識」と名付けました。「叶知識」はアートです。つまりモネの「印象・日の出」がはじめサロンで大批判を浴びたように、先駆者である我々は血へどを吐きながら突き進むしかないのであります。
そして叶ポイントは0〜10のポイントであらわします。10は最高に無駄な知識。0は無駄ではない知識です。中間はなんとなく感覚で。
それではまずひとつめの「叶知識」

アメリアアイランドテニス場のコートは転ぶと痛い」叶ポイント7

アメリアアイランドテニス場はアメリカのフロリダにある世界中で最も美しいと言われるテニス場です。アメリアアイランドのアンツーカーコート(ケイ酸の多い陶土を、高温で焼き粉にした物で覆ったコート。水はけがよい。しかし乾燥に弱い。)は転ぶと世界でいちばん痛いらしいです。アメリアアイランドは世界プロツアーが行われるコートで、われわれ一般人は関係ありません。そして、プロは転んで痛いから嫌とか言ってられません。かなりその知識を持っていても意味がないっぽいです。ただ、プロ選手は痛いと知っていればそれなりの心の準備ができるので、叶ポイントは7です。